000000 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

勝手に最遊記

勝手に最遊記

Boys Meets Girl ―3―

「あーっ!ズリーぞ八戒!俺が先に助けたのにぃ!!」指を指して怒鳴る悟空に、
「あははは。スミマセン、悟空」苦笑しながら八戒が答えた。

「悟空さんと、八戒さん?あたしは・・。」立ち上がろうとして、よろけたのを八戒が抱き留める。

「ご、ごめんなさい!・・・痛っ!!」八戒は苦痛に歪んだ女の顔を眺め、
「三蔵、悟浄。この人を休ませられる場所へ・・・」

妖艶な陽欄にデレデレしている悟浄と、苦虫を噛み潰した顔をしている三蔵は話を聞いていなかった。

しかし、陽欄の方が事態を察知してくれて
「私の屋敷で良ければどうぞ。三蔵様一行に泊まって頂けるなんて嬉しいですわ。ゆっくりしてらしてね」

「するする~!何でもしちゃうぅ~!!」
「・・・・・悟浄。鼻の下、伸びきってますよ。
とにかく屋敷へ連れていって下さい。子供達も一緒にお願いします。」

「ええ、もちろんですわ。」陽欄がにっこり微笑んだ。

大きな屋敷だった。一目で分かる高価な調度品、広い廊下・・・。 客室に案内された三蔵達だったが、

「三蔵様はどうぞこちらへ・・。別室をご用意させて頂いています。」

黙って案内される三蔵が出て行ったのを見て
「なーんで三蔵だけ個室なんだよ。・・・ま、おれは陽欄さんの部屋に行く事になるからイイけどさっ♪」
ウキウキ顔で悟浄がのたまった。
   
「このベッドに座って・・大丈夫ですか?」八戒が問いかけると
「ありがとう。あたし、桃花って言います。・・やっと自己紹介できた。八戒さん!」
「ふーん、お前桃花って名前なんだ。俺、悟空!ヨロシクなっ!」ニカッと笑顔の悟空。
「で、このいい男が悟浄って言うんだゼ?ヨロシクな、桃花チャン。」握手をしようと手を出したが、
「あっ!ダメダメ!!コイツ、エロ河童だから!触っちゃダメだよ?」「るせーよ!食欲猿!!」

「はいはい!喧嘩はソコまでにして下さいね?」また騒ぎ始めようとする悟空達を制して、

「僕が気功術で治しますから・・・背中を出してくれますか?」優しく促した。
「えっ!それって・・服を脱ぐって事・・・ですか?」赤くなった桃花を見て八戒が困ったように
「あ、でも背中だけですから!前は隠して・・・。」「それは・・・そうだけど・・・でも~。」
「はい??」「前に・・。」桃花が指を指した前に、ちゃっかり悟浄が座っていた。

「あ!俺の事は気にしないで♪ど~ぞ服を脱いじゃってよ!なんなら俺が手伝って・・・。」
八戒がコホンと咳払いし、
「悟空。・・・悟浄を連れて、部屋から出ていってもらえますか?」
「おっけー!おっけー!」ズルズルと悟空に引きずられる悟浄が喚きながら出て行くのを見送って、
八戒と桃花は吹き出していた。


三蔵は一際、大きな客室へと案内されていた。ダブルベッドである所を見ると、二人用の部屋だろう。

「どうぞ・・。ゆっくり休んで下さいね。」後ろ手に扉を閉めて、陽欄がゆっくりと三蔵に近づく。
そんな陽欄を気にする事もなく、「あの子供達は?」三蔵が問いかけた。
「お腹が空いている様でしたので、台所へ案内させました。・・・何か心配ですか?」
「イヤ・・別に。」三蔵は気乗りしない顔で陽欄の横をすり抜け、扉へと向かった。

「どちらへ?」陽欄が三蔵の腕を引き寄せた。香水の匂いが三蔵の鼻を刺す。

「八戒達の部屋だ。怪我の様子も気になるしな。」
「三蔵様。それよりも私の話を聞いて下さい。・・・私、淋しいんですのよ。夫が亡くなって三年・・。」
すり寄る陽欄を突き放し、「悪いが人生相談には興味ない。・・他を当たるんだな。」

冷たく言い放って出て行く三蔵の背中を見ながら―――――――陽欄は俯きながら震えた。

・・・そう、それならいいわ・・・・顔を上げた陽欄は、氷よりも冷たく鋭い眼差しで、
三蔵が出て行った扉を見つめていた・・・。



――――――――――――食事はいつもの通り賑やかだった。
豪勢な料理が並び、女中達が酒もドンドン運んで来る。
・・・・・・・・・それでも悟浄と悟空はハムが一枚足りない等と喧嘩しているのだが。

「三蔵、陽欄さんは?ちっとも顔を見せませんが・・。」怪訝な顔で八戒が三蔵に聞く。
「・・さあな。」まさか三蔵も自分が原因だとは言いづらい。
「ホントだぜ~!陽欄ちゃ~ん!!」「桃花も顔出さないよな~。」その悟空の声に答えるように
「うわ~!豪華な料理!!」ひょっこり桃花が顔を出した。

「どこに行ってたんですか?」八戒が椅子を勧めながら聞いた。
「う~ん・・。あの妖怪の子供達・・ここに来てから見てないの。探してたんだけど、この家広くて・・」
エヘヘと照れ笑いする桃花を見て、

「迷ってたのか?ウチの猿と同レベルだな。」「何だよ~三蔵!俺の事かー!?」
「ひどーいっ!猿と同レベルだなんて!何で猿と・・」あっと桃花が口を噤む。
「~~・・・桃花ヒデーよ。サルサルって・・・。」眼がウルウルしている悟空。

半べそをかく悟空に、必死になって機嫌をとろうとする桃花。それを野次りながら食事する三蔵を
温かく(?)見守っていた八戒は、悟浄が居なくなっている事に気付いた。

『陽欄さんの機嫌を損ねて、部屋を追い出されなければ良いんですけどね。』
ま、しょうがないと八戒はお茶を啜った。


「・・・ホント、デカイ家だよな~。」悟浄は陽欄を探して歩いていた。

食事もたらふく食べたし、酒も飲んでほろ酔い気分。
「後は色欲だけだよな~♪」デヘヘとスケベ笑いをした。

角を曲がった所で、悟浄は陽欄を見つけた。

全身を透けるような布で覆い、笑みを浮かべている。廊下に灯された光が、妖しく揺らめいている。

思わず・・・・ゴクリ、と悟浄は唾を飲み込んだ。

「俺を待って?」ニヤリと笑いながら、悟浄は煙草に火を付けた。
「そうよ・・。」陽欄は悟浄に・・・・・にじり寄った。

「でも煙草はダメ。だって・・。」「だって?」煙草を悟浄の唇から奪い、投げ捨てた陽欄が微笑みながら
「美味しくないじゃない・・。」その言葉の意味を考える暇もなく、悟浄は陽欄の口づけに心を奪われた。


© Rakuten Group, Inc.
X